教員コラム
【教員リレーコラム】第29回 井川大樹「一歩外に出ることで広がる世界」
「井の中の蛙大海を知らず」という言葉をご存じでしょうか。これは、「井戸の中に住むカエルは、広大な海について知ることができない」という意味で、自分の狭い知識や経験にとらわれて広い世界があることを知らない状態を指す日本のことわざです。私たちも日常生活の中で、気づかないうちに「井の中の蛙」になってしまっていることがあるかもしれません。
私は11月にAPOTC2024(第8回アジア太平洋作業療法学会)に参加し、初めて英語で口頭発表を行いました。
テーマは「Exploring the Dynamics of Interpersonal Contact Effects Persisting After Disengagement from Tactile Connections(離れた後にも残存する対人接触効果ダイナミクスの解明)」でした。
この発表には多くの反省点がありましたが、それでも貴重な経験となりました。実際に発表してみなければ気づかなかったことが多くあり、失敗の中で多くの学びを得ることができました。恥ずかしさや悔しさもありますが、この経験が次の挑戦への糧になります。次に発表する際には、今回の反省を活かし、相手に伝わる発表を目指したいと思っています。
この経験を通じて感じたことは、少しの勇気を持って「外に出ること」の大切さです。授業でも、私は学生に積極的に発言を促しています。しかし、学生の中には「みんなの前で間違ったことを言うのが恥ずかしい」と感じる人も少なくありません。そのような学生に対して、私はこう伝えます。「たとえ間違っていても、それが分かったことは大きな収穫だよ。もし発言しなければ、間違いにすら気づけなかったかもしれない」。人は頭の中で考えているだけでは、分かった気になることがあります。だからこそ、発言や行動によって「外に出る」ことが重要なのです。
もちろん、教員としても発言に対して頭ごなしに否定するのではなく、学生の成長を後押しする姿勢が必要です。自分で考え、相手に伝え、そのプロセスを通じて学び成長する。この繰り返しが人間としての成長を促します。
大学とは、本来自分の頭で考え、自ら答えを見つけていく場です。そして、教員はその道を先に歩んできた先輩です。専門職大学ではさらに臨床現場での経験も積んだ先輩として、学生を導きます。大学という場には、自分の「井の中」から一歩外に出る貴重な機会があります。その機会を生かし、広い世界を知ることこそが成長への第一歩だと感じています。
皆さんも、失敗や恥ずかしい思いを恐れず、自分の世界から一歩踏み出してみませんか。その先には、これまで想像もしなかった広い世界が広がっているはずです。
執筆者プロフィール
井川 大樹(DAIJU IKAWA)
作業療法学科 講師
専門領域:人間医工学、健康・スポーツ科学