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教員コラム

【教員リレーコラム】第10回 大武聖「理学療法士・作業療法士と研究」

理学療法学科の大武聖(おおたけ さとし)です。

私は先日、神戸で開催された第30回日本心臓リハビリテーション学会学術集会に参加してきました。
学会では様々な講演や多くの研究発表を聴き、また会場では昔の同僚や元教え子など懐かしい顔に会うなどしてたくさん刺激を受けてきました。

学生と学会や研究について話をするとよく、「研究は現場で働きたい自分にとって関係ないもの」といった意見を聞くことがあります。はたして本当にそうなのでしょうか?


現場で働く理学療法士(以下、PT)や作業療法士(以下、OT)が対象者に対して行う治療は科学的根拠に基づき、対象者に適用可能な手段を選択して実施されます。
このような考え方を「(科学的)根拠に基づいた医療(Evidence-Based Medicine:EBM)」といいますが、ここで示されている科学的根拠とはこれまでに行われてきた医学や医療についての研究の成果のことです。

  • ちなみに、理学療法士・作業療法士は、それぞれの協会で対象となる疾患別に科学的根拠となる研究成果をまとめてガイドラインとして公開しています。

    【参考】理学療法ガイドライン第2版 https://www.jspt.or.jp/guideline/2nd/
    【参考】(作業療法)疾患別ガイドライン https://www.jaot.or.jp/academic_committee/

また、研究の成果は日々増え続けており、これまで最良とされていたものよりもっと良い治療法が見つかることや、時にはそれまで良いとされていた方法が否定されることもあります。

この情報収集を怠ると対象者に対して効果のあまり期待できない治療を選択してしまうことや、場合によっては害になることを行ってしまう危険性も出てくることから、PT・OTは学会参加や論文を読むなどして常に最新の知見に注目し続ける必要があります。

これがPTやOTは一生勉強し続ける仕事だと言われる理由でもあります。


ここまでは研究の成果を収集し、利用するだけなので、PT・OTの仕事は研究と直接関係がないように思えるかもしれません。
しかし、この科学的根拠とされる研究の成果は、「研究の専門家たちが研究室の中で生み出したもの」だけでなく、「現場で働くPTやOTが現場で対象者の治療を行った結果をまとめたもの」も含まれます。

特に対象者に行った治療の結果などは現場でしか得られないデータであり、現場のPT・OTが研究を行い、成果を発信しないと医療は発展しません。

このように現場で働くPTやOTも研究とは無関係ではなく、むしろ密接に関わっています。


PT・OTを養成校する大学では、職業能力の養成に加えて幅広い教養や学術活動(研究)について学ぶため、研究の基礎知識は卒業する時点で身に付けていると考えられます。
その中でも特に専門職大学である本学で学び、実務リーダーになることが期待される学生の皆さんには、科学的根拠を活用する側でなく生み出す側になってほしいと思っています。

最後に、今回の学会では元教え子(別の大学ですが)が臨床で収集したデータをまとめた研究に私も共同研究者として参加し、その成果を発表しました。

現場に立った卒業生が研究を行う姿は非常に頼もしく、そこに参加できたことは私にとって大きな喜びでした。

本学で学ぶ学生の皆さんとも同じように在学中に研究について一緒に学び、卒業後も共同で研究に関わっていけると良いなと思っています。

執筆者プロフィール

大武 聖(SATOSHI OOTAKE)

理学療法学科 准教授
専門領域:ヘルスプロモーション、切断のリハビリテーション、内部障害系理学療法

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