教員コラム
【教員リレーコラム】第34回 江幡真史「そうじのチカラ」
20年ほど前の早朝6時から新宿駅周辺の清掃活動に参加しました。これは1993年に始まる「日本を美しくする会」の活動で、現在は日本各地から世界へと広がっています。この活動の効用は周囲が綺麗になるだけではなく、清掃をする人自身の「心が磨かれる」ことにもあります。
その後、私が上場会社の社長に就任した際には、毎週月曜日の夕刻20分間を使って全社員でオフィス内の清掃を実施することとしました。この活動を通じて社員がゴミの落ちている原因を主体的に探るようになり、その結果として仕事の手順が改められ、ゴミを直ちに取り除けるように道具が配置されるなどの工夫がされました。さらに他人への心配りが養われ、愛社心や自負心が形成されることにもなりました。また、当初は想定していなかったことですが、「他の会社の受付や待合室の様子から、その会社の経営の質までも読み取れるようになる」といった効用までありました。
さて、本学は江東区アダプト・プログラムに参加し、各学年のクラスごとに年1回ずつ、学校周辺の清掃活動を実施しています。「アダプト・プログラム」とは、市民と行政が協働で町の清掃活動をおこなうことです。
私は毎回この活動の総括で、どのようなところにどんなゴミが落ちているかを確認しています。例えばたばこの吸い殻が落ちているのは公園のベンチの周辺であったり、空き缶は歩道の生け垣の中に捨てられていたりといった具合です。そこから、たばこを吸っている人の姿や空き缶を捨てた人の姿が目に浮かびます。つまり清掃活動を通じて「人の行動」が見えるわけです。これこそが効用で、周辺が綺麗になるだけではなく、学生自身が社会の一員であることに気づくわけです。
本学の建学の精神は「健常者・障がい者、若年者・高齢者など多様な人々が「共生できる社会の実現と発展」』であり、この実現に向けて医療分野において地域で活躍する「実務リーダー」を養成することを教育目的としています。本コラムでご紹介したことを例に、本学のすべての活動がこの目的を実現するために組み立てられていることに誇りを覚えます。
執筆者プロフィール
江幡 真史(SHINJI EBATA)
理学療法学科 教授
専門領域:経営史、経営戦略、企業統治