教員コラム
【教員リレーコラム】第5回 飛松好子「乗り鉄」
子供の頃から電車が好きでした。電車に乗って遠くまで行ってみたいといつも思っていました。
長距離バスも好きです。道の駅で地産品の野菜を見たりするのも好きです。飛行機も好きです。
ただし乗るのはあまり好きではありません。狭いところにじっと座っているのが苦痛だからです。こちらは見る方が好きです。
地下鉄東西線の東陽町から大学まで歩いて通うのですが、その道(四つ目通り)の東側を羽田空港を発進した飛行機が通ります。大学の行き帰りに飛行機を間近に見るのが楽しみです。
ちなみに着陸する方は明治通りの上空を南下します。私は歩くのも趣味なので明治通りを歩いたりするのですが、そのときには頭上を通り過ぎていく飛行機を見るとうれしくなります。
鉄道の方は乗ってもうれしいし見るのも好きです。駅で電車を待っていて、カーブを切って電車が近づいてくるとわくわくします。電車を運行している鉄道会社の安全管理、正確な運行に対する努力には頭が下がります。
私は乗り鉄です。
乗り鉄とは、電車に乗ることを趣味としている人のことです。ただ乗っているだけなので楽は楽なのですが、事前に周到な情報収集と準備が必要です。
乗り鉄にはルールがあります(マイルールなので人によって違うとは思いますが)。
ローカル線の各駅停車に乗らないと乗ったことにはなりません。しかも乗ってる間居眠りをしたり、ゲームや読書をしてはいけません。ひたすら景色を眺め、乗ってくる人を観察し、左右の景色に気を配ります。
ローカル線に乗っていると時には乗り鉄とおぼしき人だけが乗っていることにもなります。幸か不幸かよくあることなのですが、互いにおしゃべりをすることは慎みます。なぜならば、それぞれのマイルールで乗っているので忙しく、つまらない会話をすることは人の邪魔になるからです。
乗り鉄に似た趣味として撮り鉄があります。
こちらは電車を写真に撮ることが趣味の人々で、要所要所に鈴なりになって電車の通過を待ち受けます。線路内に立ち入ったり、畑を荒らしたりと顰蹙を買うような人たちも中にはいます。
乗り鉄をしているとこういう人たちにも会いますが、この人たちも電車が好きで、シャッターチャンスを待って何時間も寒いところで立ち尽くしたり、かなりの苦労です。
乗り鉄をするには準備が必要です。
地図と時刻表を眺めて、接続を考え、田舎の駅で立ち往生しないように計画を立てます。だから最終的には乗り鉄同士が一日中一緒に移動するというようなことになるのです。こういうときにはお互い目をそらし、素知らぬ顔をして気まずさに耐え、また互いに邪魔しないようにします。
乗り鉄の強い味方に青春18切符と、高齢者向けの大人の休日フリー切符があります。
前者は各駅停車しか乗れませんが、延べ5日間乗り放題、料金は12500円です。複数人で分け合うことも可能です。後者は高齢者の会員だけが買え、ある期間、ある範囲の新幹線を含む特急を含めて乗り放題の切符です。
このような切符を利用して、費用を最小限に抑え、乗り鉄を楽しんでいます。
とりあえずの目標はJRの全線制覇です。まだまだ制覇の道は遠いです。
このような地味な趣味ではありますが、心配事が2つあります。
一つは、そもそも乗るべきローカル線が次々と廃線の憂き目に遭っているということです。
台風が来た、不通になった、復旧しない、廃線となるというパターンがよくあります。さっさと乗らないと線がなくなってしまうのです。また、乗った線も次々なくなっていきます。コストパフォーマンスからいって維持せよということはJRに対してあまりに酷なので甘んじるほかありません。対策としてはさっさと乗ってしまうことだけです。
もう一つは青春18切符の廃止が噂されていることです。そもそもが乗るべきローカル線が廃止されていることがありますが、青春18切符のユーザーは乗り鉄だけではありません。年末年始、あるいは夏季の帰省客の利用も実は多いのです。
例えば東京から関西への帰省を一家でするとなると新幹線を使うと莫大な費用がかかりますが、青春18切符を使うと安い費用ですみます。青春18切符は実は庶民の味方なのです。そしてニュースにはなりませんが、東海道本線各駅停車は年末年始すごく混み合います。乗換駅ではダッシュで乗り換え、次の列車にも同じような人が乗っていて西へと移動して行きます。
いつもは自分でルートを組み立てて、あれこれ工夫して次の乗り鉄を楽しみにして過ごしています。
ところで私は行った先々で写真をとるということはしないのですが、珍しいものをみると写真を撮って孫にクイズをだします。
いくつか紹介します。わかりますか?
このお方はどこの駅にいるどなたでしょう。
執筆者プロフィール
飛松 好子(YOSHIKO TOBIMATSU)
理学療法学科 教授
専門領域:整形外科学