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【教員リレーコラム】第9回 海野俊平「氷山の一角を大きくする仕事」

「氷山の一角」という言葉があります。

悪事が発覚したときなどに、もっと巨大な悪のほんの一部が露呈しただけだ、というようなことを言いたいときに使う言葉です。
良いものを表す言葉ではないですね。しかしここでいう「氷山の一角」はそれとは違う、もうちょっと良い意味で(勝手に)使っている言葉です。

そもそも氷山の一角はなぜ海面下に隠れている部分よりはるかに小さいのでしょう。それは、水が凍ると液体の水よりほんの少しだけ体積が大きく(密度が小さく)なることによります。その結果、氷全体の約1/10の部分だけが水面の上に顔を出し、船からそれを見た人が氷山全体の大きさを見誤ることになるわけです。


この大学における私の仕事は「生理学」を教えることです。

生理学では例えば、「ニューロンにおける活動電位発生のメカニズム」などを学びますが、皆さんが将来臨床の現場でそれを深く理解しているかどうかを問われるということは多くないでしょう。
要は実際そんなに使う場面はないけど、そのわりには難しくて大変、そういう科目です。

 

「氷山の一角」という言葉を使った理由は、
「生理学を学ぶこと」 = 「海面下で氷山の一角を支える部分を構築すること」
と考えてほしいからです。

船から見える「氷山の一角」は、臨床現場に出た皆さんの、患者さんや社会から見た理学療法士・作業療法士としての姿です。
その核心部分は、理学療法学・作業療法学の専門知識や技術によって形作られているはずです。
それは最も大事な部分なので皆さん一生懸命習得するでしょう。

見えない部分はちょっと手を抜きたくなるでしょうが、それをやってしまうとせっかく作った「一角」の大部分が沈んでしまうのです。
「氷山の一角」を海面上に出すには、それよりはるかに大きいけど海面下に隠れてしまう部分が必要なのです。

というわけで、私の仕事は「氷山の海面下部分の構築のお手伝い」をすること、と言い換えることができます。
構築するのは皆さん自身なので、あくまでお手伝いです。

そしてそれは、患者さんや社会から見える「氷山の一角を大きくすること」につながります。

一角の9倍の大きさの部分を作るので大変ではありますが、大変なだけではありません。

人体はすばらしく良くできていて、知的好奇心を刺激する材料であふれています。
日々生きていることがそれだけですごいことだ、と思えるかもしれません。
きっと楽しいはずです。

すでに学んでいる人も、これからこの大学の門をたたこうという人も、それをぜひこの大学で一緒にやりましょう。

最後に、我らがTPUキャンパスから望む運河と、そこで見られる生き物をいくつかお見せします。

キャンパスのすぐ横を流れる汐見運河

エイ

へび

 

執筆者プロフィール

海野 俊平(SYUNPEI UNNO)

理学療法学科 准教授
専門領域:神経科学、神経生理学

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